ワキガの原因とチェック方法

ワキガの臭いの強さと原因は人それぞれ

ワキガは病気ではなく、あくまで遺伝的な「体質」です。
わきの下から特有のワキガのニオイがするのが主な症状で、多汗をともなう場合もよくあります。
わきの下のニオイに悩んでいる方から、「ワキガというのはどのようなニオイがするのですか?」という質問をよく受けますが、ことばで表現するのは難しく、誤解を招く原因にもなります。
ですから、わきの下のニオイが本当のワキガかどうかを知りたい場合は、ワキガのノイローゼにおちいらないためにも、とにかく一度、医療機関でしっかり診断してもらうことが大切です。このとき、皮膚科または形成外科で診てもらうのがよいでしょう。

 

病院の門をくぐるのは、ちょっと勇気のいることかもしれません。
しかし、ワキガの診断はとても簡単です。特別な器械を用いるわけではなく、患者さんに片方の腕を上げてもらい脇の下に鼻を近づけてクンクン匂いをかぐだけです。
原始的な方法に思えるでしょうが、これが一番確実なのです。
ワキガのニオイとひと口にいっても、人によってニオイの強きやタイプが異なります。
それでも、ワキガ臭に精通している皮膚科や形成外科の医師であれば、すぐにワキガかどうか診断できます。
その際には、制汗剤などは使用しない状態で、自分でもニオイがわかるときに受診しなければ判断がつかないのは言うまでもありません。

ワキガの臭いの原因は、ずばり「アポクリン汗腺」です

ワキガのニオイは、わきの下の皮膚の内側から生み出されます。
皮膚は、私たちがふだん目にしている最上層の「表皮」と、その下にある「真皮」、そして「皮下脂肪」の三層からなっています。
そこには血管や神経、毛包(わき毛を作り出す組織)とともに汗を出す二種類の「汗腺」が分布しています。
アポクリン汗腺とエクリン汗腺がそうです。
このうち、ワキガのニオイの元凶ともいえるのが、アポクリン汗腺です。
アポクリン汗腺は、ヘピがとぐろを巻いたような形で皮下脂肪と真皮にまたがって存在し、わき毛穴を介して汗を分泌しています。
アポクリン汗そのものは無臭ですが、わきの下の皮膚表面ににじみでたあと、特有のニオイを発します。
すなわち、アポクリン汗は、脂肪やたんぱく質を豊富に含んでいるため、多量に分泌されると、皮膚表面に付着している細菌がその脂肪やたんぱく質をどんどん分解し、ワキガのニオイを生み出すのです。
そのまま放置しておくと、さらに細菌が増えてニオイが強くなります。
逆に、シャワーを浴びたり、わき毛を剃ったり、殺菌剤をぬったりすると、皮膚表面の細菌が激減するため、一時的にニオイが抑えられます。それでも数時間でまたワキガ臭が復活するのは、時間がたつにつれてわきの下にアポクリン汗がじわじわと分泌され、ふたたび細菌が増殖するためです。
ちなみに、アポクリン汗腺は、からだのなかでも限られた部分にだけ分布しています。
わきの下はその代表で、ほかに外陰部、乳首、紅門、へその周囲にもあります。また、ワキガ体質の方は、耳の穴のなかにもアポクリン汗腺があることがわかっています。ワキガの方の耳アカがしめってやわらかいのは、耳のなかにあるアポクリン汗腺から絶えず汗が分泌されているからです。
アポクリン汗腺は、性ホルモンの分泌が高まるにつれて発達します。ですから、思春期を境にワキガのニオイがではじめる例が多く、成長するにつれてどんどんニオイが強くなります。そして20歳前後でピークとなって、壮年期以降は少しずつ軽くなっていくことがあります。

皮脂腺や多汗症がワキガの臭いを増長している

ワキガのニオイには、皮脂腺から分泌される脂質も関わっています。
皮脂腺は、アポクリン汗腺とともに毛包に付属して分布していて、わき毛のような硬い毛が生えているところには、アポクリン汗腺と皮脂腺が必ず一緒に存在します。
皮脂腺から分泌される脂質は、本来、皮膚や毛にうるおいを与える役目をしています。
若い人の肌がしっとりすべすべしているのはまさに皮脂腺由来の脂質が多いためですが、この皮脂腺から分泌された脂質もまた、皮膚表面でアポクリン汗腺由来の汗とともに細菌に分解され、ワキガ特有のニオイを生み出す一翼を担うのです。
ただし、皮脂腺からの脂質のみではワキガ臭にはなりません。
もう一つ、間接的にワキガ臭に関わっているのが、エクリン汗腺です。
エクリン汗腺は、アポクリン汗腺よりさらに皮膚の浅いところに存在しています。アポクリン汗腺と災なるのは、全身に広く分布し、毛穴とは関係なく皮膚表面に汗を分泌している点です。
エクリン汗は、私たちにとってなじみ深い汗でもあります。運動をしたり、風邪をひいたりして体温があがると汗がたくさんでできますが、これがまさにエクリン汗で、エクリン汗が皮膚表面で蒸発することによって体熱が奪われ、体温が調節されるしくみになっています。
エクリン汗は、水と塩でできていて、ニオイはほとんどありません。しかし、ワキガ臭の元凶であるアポクリン汗と皮脂が分泌されているところにエクリン汗を多量にかくと、エクリン汗が蒸発するときにニオイも一緒に拡散され、周囲にワキガ臭をまき散らす結果になってしまうのです。
とくに、腋窩多汗症(わきの下に多量の汗をかく症状)をともなっているワキガの方は大変です。
腋窩多汗症の方は、いわばエクリン汗腺の蛇口がゆるみっぱなしの状態で、エクリン汗が1日中だらだらと流れ出てきます。
この汗が、ワキガのニオイを増長するのです。
加えて、エクリン汗がつねに分泌され、しめった状態にあるわきの下は、細菌にとって最高に居心地のいい棲み家となります。
こまめに汗をケアしていないと、ほどよい湿度とおいしいごちそうが用意されたわきの下で、細菌はどんどん増殖し、ワキガ臭を生み出し
てしまいます。

ワキガチェックその1 「家族もワキガ?」

近親者にワキガの人がいるかどうかは、自分がワキガ体質かどうかを知る大きな手がかりになります。
なぜなら、ワキガは遺伝によって起こるからです。正確にいうと「ワキガになりやすい体質」が遺伝します。か常染色体優性遺伝と呼ばれるものです。他人からワキガがうつると思っている方もいらっしゃいますが、それはまちがいです。
父親と母親のどちらかがワキガ体質の場合は、約半数の子どもに遺伝するといわれています。また、両親ともワキガ体質の場合は、8割近くの子どもにワキガ体質が遺伝します。
一方、父親と母親がワキガでない場合でも、おじいちゃん、おばあちゃん、あるいは血のつながった親戚のおじさん、おばさんなどにワキガの人がいらっしゃれば、その体質を受け継いでいる可能性があります。
このとき重↓姿なのは、ワキガ体質を受け継いでいても、すべての人にワキガ臭が発生するとは限らない点です。ニオイのないまま過ごしている方も多いのです。

ワキガチェックその2 「何歳ごろから臭いだした?」

ワキガ体質を受け継いでいても、幼少期にワキガのニオイが発生することはありません。
小学校向学年くらいになって思春期を迎えたころに、特有のニオイに気づくケースが大半です。
当院の調査では、女性の場合、ワキガ臭の発生時期と、生理の開始時期がほぼ並行していることが確認できました。
また、ワキガの女性は、ワキガでない女性にくらべて、生理開始時期がいくぶん早い傾向にあったのも興味深い事実でした。
ワキガが思春期ごろに発生しやすいのは、ワキガのニオイが性ホルモンの分泌量と密接に関係しているためです。性ホルモンの分泌が活発になるにつれて、ワキガのニオイはどんどん強くなります。
そして女性の場合は、更年期を過ぎて女性ホルモンの分泌が激減すると、腋臭の臭いが弱くなることがわかっています。
ただし、男女を問わず、一度ワキガのニオイが発生した方は、適切な治療をしないかぎり、ワキガ臭が完全に消えることはありません。
逆に、ワキガ体質を受け継いでいても、成人するまでにワキガのニオイがでなければ、その後ワキガになる心配はないと考えていいでしょう。おとなになってから突然ワキガになる人はいないのです。
もし成人になってからニオイが気になるようですと、加齢臭の可能性が高いのです。

ワキガチェックその3 「耳アカは湿っている?」

近親者にワキガの人がいた場合、自分がその「ワキガ体質」を受け継いでいるかどうかは耳アカのタイプを調べることで判断できます。
耳アカは、遺伝的に二つのタイプに分けられます。一つは、カサカサに乾いた灰白色の耳アカ。そしてもう一つが、しめってやわらかい黄褐色の耳アカです。
このうち、ワキガ体質の方は、しめってやわらかい耳アカの方に限定されることがわかってします。
他方、耳アカがカザカサで乾いている方は、ワキガの心配はないと考えていただいていいでしょう。
前院長(父)の代からの数十年にわたる治療経験からいって、耳アカが乾いている方で、ワキカのニオイが確認できた例はありません。
ただし、耳アカがしめってやわらかい方も、すべての方にワキガのニオイが発生するわけではありません。あくまで、ワキガになりやすい体質を受け継いでいるということです。

ワキガチェックその4 「家族からワキガが臭いって言われたことある?」

ワキガのニオイがないのに、自分がワキガだと思い込んでいる方に、なぜニオイが気になり、だしたのかを尋ねてみると、友だちから「ワキガじゃないの?」とからかわれた」といった声がよく聞かれます。
他人というのは、概して無責任なことを口にするものです。とくに、ニオイに対して異常なほど過敏になっている現代の日本では、ちょっとしたニオイでも大袈裟に指摘したり、あからさまにイヤがったりする例が目につきます。
また、周囲の人の行動をみて、自分にニオイがあると思ってしまうこともあります。

 

「電車に乗っていて、周りの人が鼻をおさえる」
「周聞の人が咳ばらいをする」
「自分をみてイヤな顔をする」
など、他人のことぼや態度で判断するのは賢明ではないでしょう。
これに対して、親・兄弟といった近親者からワキガのニオイを指摘された場合は、ワキガである可能性大です。ワキガが遺伝体質であることを考えると、近親者がワキガのニオイをよく知っていることは容易に推測されますし、指摘した近親者自身がワキガの場合も少なくないと思われます。
ただし、その場合でもすぐに「自分はワキガだ」と決めつけるのは早計です。実際に近親者にワキガの人がいるかどうか、耳アカがしめってやわらかいかどうか、ニオイを指摘されたのが思春期ごろか、といったことをチェックしたのち、すべてに当てはまるようなら皮膚科または形成外科で診断してもらうことをおすすめします。
とにかく、確定診断は医師がおこなうものです。

ワキガチェックその5 「汗の出やすい脇の部分とか、服の黄ばみ・変色がある?」

ワキガの場合、ニオイを生み出すアポクリン汗腺からの分泌物によって衣類が変色することが確かにあります。
しかし、衣類に黄ばみ・変色があるからといって必ずしもワキガであるわけではありません。
来院される方で衣類が黄ばんでいるのをみかけますが、よくはなしを聞いてみると一日に数回制汗剤を使用しているようです。制汗剤はくりかえし使用していると、衣類の繊維にこびりつき、徐々に変色する原因となります。
また、ごくまれな話しですが、色汗症といってエクリン汗腺から出る汗に色がついている場合にも、衣類の変色がみられます。もちろん、これもワキガとは関係ありません。
あくまでも診断の助けになる程度のことで、衣類の黄ばみ・変色のみでワキガの診断はできません。