ワキガ・多汗症の手術のリスク

手術療法で起こりゃすい合併症

さて、これまで紹介してきた手術療法はどれも、術後にさまざまな合併症が起こる可能性をもっています。
とくに、効果の高い治療法ほど合併症が起こりゃすいというジレンマが、形成外科医・皮膚科医を悩ませています。
手術後に起こりゃすい合併症は以下のとおりです。

出血・血腫

手術をすれば、出血するのは避けられません。
このとき、出血した血液が皮膚の内部にとどまって血腫という塊になるとやっかいです。
血腫によって細菌感染や皮膚の壊死が起こって、傷の治りが遅くなる場合があるのです。
出血を最小限に抑えるには、術後、しっかりと圧迫固定をおこない、安静にしていることが最も大切です。止血剤やビタミンCの服用も、ある程度効果があります。

化膿(感染)

手術後、創部に細菌が感染すると、皮膚内部に膿がたまって化膿します。
手術直後は、わきの下に多量の汗をかくような行為は避け、入浴中もわきの下をぬらさないよう注意します。
一方、手術後ある程度の時間がたつて、創部が落ち着いてきたら、今度はわきの下を清潔に保つ意味で、石けんでよく洗うよう心がけましょう。
手術直前に自分でわき毛を抜くのも好ましくありません。
わき毛を抜くと、毛穴の内部が化膿し、ニキビのように赤く盛りあがったりしてきます。
その膿から細菌感染を起こす危険性があるのです。

傷あと・肥厚性傷あと

手術で、メスを入れたり縫ったりしたところは必ず傷あとが残ります。
その傷あとの治り方は個人差がありますが、一般的には時間がたつにつれて白い癒痕となり、次第にうすくなっていくのが普通です。
しかし、次のような体質の方は通常より傷の治りが遅くなります。

 

肥厚性傷あとは、手術後に創部が少し盛りあがって、硬いしこりや、白い傷あととして残ります。切り傷のほか、ニキビや水ぼうそう、予防注射のあとにも起こります。
治り方には個人差がありますが、軟膏や注射で治療を続けていると、徐々に軽快していくことが多いです。

ケロイド症

手術後、創部が、数週間から数か月にわたって徐々に赤く盛りあがり、かゆみ・痛みを
ともな、っ場合は、ケロイド症が疑われます。
ケロイド症の場合は、術後なるべく早期の治療が必要です。
圧迫療法、軟膏療法(ステロイド剤やヘパリン類似物質など)、ステロイド剤の局所注射、内服療法(トラニラストなど)のほか、皮膚の隆起が激しい場合は切除療法、放射線療法をおこなうこともあります。
多くの場合、半年以上かけて治療するうちに、ケロイドは白いしこりや傷あととなって徐々に落ち着いていきます。

シワや毛穴の残存

わきの下にもともとシワの多い方や、皮膚に弾力のない方、ケロイド症・肥厚性傷あとの体質をもつ方などは、手術後、皮膚がたるんでシワが残りやすくなります。
皮肉なことに、ワキガを治すには皮膚の裏側をよりうすく削る必要がありますが、手術によって皮膚がうすくなればなるほど、シワが残りやすくなるのです。
シワを防ぐには、術後にわきの下の皮膚をよく伸ばすことが大切です。
年月がたつて皮膚がやわらかくなれば、手術で生じたシワは次第に減っていきます。

 

切除法以外の手術では、わきの下の皮膚表面にはすべての毛穴が残ります。
それでも、わき毛がなくなると、毛穴はだんだん小さく縮んで消えていきます。
ただし、わきの下を不潔にしていると、毛穴にアカや脂がたまって黒い点状に残ってしまいます。
これは軟膏療法で軽快しますが、小さな切開が必要となる場合もあります。

色素沈着

手術後、わきの下に赤茶色の色素沈着が起こる場合があります。
この赤茶の色素沈着も、皮膚の裏側をうすく削りとることによって起こりますので、確実な治療をおこなうためには避けられない合併症です。
症状が強い場合には軟膏をぬったり、薬の内服などの治療をおこないます。
また、皮膚に炎症が起こりゃすい方は色素沈着が濃くなりやすい傾向にあります。アトーl性皮膚炎の方や、制汗剤にかぶれやすい方、もともと皮膚が茶色になっている方などがそうです。
年月とともにうすくなっていくのが通例ですが、体質によってうすい色素沈着が残るケースもあります。

しびれ

手術後、皮膚の表面や周囲に軽いしびれやチクチクした感じを覚えることがあります。
これは手術によって皮膚の裏側の汗腺をとるため、皮膚表面に分布している細かい知覚神経が必ずダメージを受けてしまうことによって起こります。
また、術後の固定で、わきの下を強く圧迫すると、太い神経にひびいて、ひじから先に一時的なしびれが起こることもあります。
いずれのしびれも、通常は一年以内に回復します。ビタミンBの服用が有効な場合もあります。

使用中の薬剤の影響

手術前後にステロイド剤を使用していると、創部の治りが悪くなったり、化膿の原因となる場合があります。
また、心臓の病気などで服用する抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬)は、出血の原因になります。

薬のアレルギー

抗生物質や鎮痛剤、麻酔薬などの注射で、皮膚に赤い斑点・湿疹がでたり、気分が悪くなった経験のある方は、薬に対するアレルギーをもっている可能性があります。手術前に医師にそのことを告げることが大切です。
薬のアレルギーで最も恐ろしいのが、アナフィラキシー・ショック。
麻酔薬などによって血圧低下や呼吸困難におちいる場合もあり、あらかじめ予想できないのでやっかいですが、きわめてまれな症状です。