多汗症のチェック方法

汗かきと多汗症では何がちがう?

腋窩多汗症とは、わきの下(腋窩)に多量の汗をかく症状をいいます。

 

わきの下以外でも、汗をかきやすい部位はたくさんあります。手のひら、足の裏、背中、胸もと、首まわり、おなか、額はその代表。
多汗症といった場合これらすべての部位を含みますが、ここではワキガと併発しやすい、わきの下の多汗症である「腋窩多汗症」についてのみとりあげます。

 

わきの下に多量の汗をかくといっても、どこからが多汗症で、どこまでが単なる汗かきなのかという明確な診断基準はありません。

 

あくまで患者さん自身の訴えに基づいて、医師が診断をくだしますが、目安として次のチェック項目に当てはまる方は腋窩多汗症が疑われます。

チェックポイントその1 「いつも汗が出続ける?」

夏の蒸し暑い日や、サウナへ入ったとき、あるいは運動をしたあとなどは、誰でもわきの下にじっとり汗がにじみでてきます。

 

しかし、これといった理由もないまま、三六五日、朝起きてから夜寝るまで24時間ずっと、わきの下が汗でぬれているようなら、腋窩多汗症の可能性大です。

 

腋窩多汗症の方は、わきの下から絶えず多量の汗が流れ出ていて、こまめに汗をふいたり、汗わきパッドなどでケアしていないと、着ているシャツが袖までびっしょりぬれてしまいます。
汗に色がついているケースでは、体にふれている衣類の部分がそのまま汗ジミになってしまうほどです。

 

実際に診察する際に、「腕をあげてください」というと、腋窩多汗症の方は、衣類のわきの下に腕の形でくっきりと汗ジミがついているのが通例です。

 

そして、症状が強い方の場合は、腕をあげると汗がたらたらっと一気にしたたり落ちて、ズボンのベルトまでぬれてしまったり、上着の表面まで汗がにじんでいる場合もあります。

 

こうした方は、ふだんから腕をあげるのを極端に怖がります。
わきの下をピタッとくっつけた状態で過ごしていて、その様子は本当に気の毒なほどです。

 

このように、昼夜を問わず、一日中、わきの下からだらだらと汗がしたたり落ちてくるのが、持続的な腋窩多汗症です。
家でのんびりテレビを観ているようなときでも、わきの下の汗がとまらないところが、次に紹介する一時的な緊張性の腋窩多汗症と大きく異なる点です。

チェックポイントその2 「緊張すると異常に汗がでる?」

緊張したときに汗をかくのは珍しいことではありません。

 

例えば、腋窩多汗症でない私も、学会のような席で大勢の人の前で講演するときなどは、緊張感からわきの下にじっとりと汗がにじんできます。いわゆる「冷や汗」と呼ばれるものです。

 

しかし、その汗の量が異常なほど多かったり、ちょっとした緊張でもわきの下からどっと汗がでてくるようなら、緊張性の腋窩多汗症が疑われます。
緊張性の腋窩多汗症の方は、ふだんは汗をほとんどかかないのに、精神的に緊張したときだけ、一時的にわきの下から多量の汗がでできます。

 

学校や会社、電車の中など、人の大勢いる場所へ行ったり、慣れない場所に身を置いたり、あるいは見知らぬ人とはなしをしたりするたび、過度の緊張から、シャツのわきの下がぐしょぐしょになるほど多量の汗をかいてしまうのです。

 

ところが、自宅へ帰ると、ウソのように汗はひいてしまいます。家族や、仲のよい友人とリラックスして過ごしているときは、汗がほとんどでないのが、緊張性の腋窩多汗症の特徴です。

 

多くの場合、時間がたってその場の雰囲気や人に慣れてくると、しだいに症状は治まっていきます。
しかし、同じ会社に何十年も勤めていて、いまだに出社すると緊張して汗がとまらないというケースもあります。

多汗症でも、症状はさまざま

腋窩多汗症は、大きく分けて「持続的なタイプ」と「一時的なタイプ」の二種類あります。
どちらの場合も、ワキガと同じように、わきの下の皮膚に分布している汗腺の異常によって発生します。

 

ワキガのニオイは、皮下脂肪から真皮層にかけて分布しているアポクリン汗腺が元凶でした。これに対して肢寓多汗症は、皮膚のもう少し浅いところに分布しているエクリン汗腺の異常が引き金となります。

 

エクリン汗腺の働きについて簡単におさらいすると、エクリン汗腺は無臭で水っぽい汗をだす器官です。
運動したあとや発熱したときなどに出る汗が、まさにエクリン汗腺由来の汗で、体温を調節する重要な役目を担っています。

 

持続的な腋窩多汗症の方は、このエクリン汗腺の機能が発達しすぎて暴走し、汗の分泌量が調節不能の状態にあるのです。

 

そのため、これといった理由もなく、一日中汗が、だらだらと流れ出てきます。

 

そうなりますと、冬の寒い日であっても、わきがぬれているほどの発汗があるため「とても寒くてつらい」とおっしゃる患者さんもいます。

 

このとき、ワキガ体質でない方は、アポクリン汗腺は発達していないため、汗が多量に出るだけでワキガ臭は発生しません。

緊張してかく汗は習慣化する?

精神的に緊張しやすくて、そのたびに異常なほどわきの下に多量の汗をかくのが、的な緊張性の腋窩多汗症です。

 

緊張性の腋窩多汗症の方は、持続的な腋窩多汗症と違って、エクリン汗腺そのものの発達は正常な状態にあります。

 

ところが、精神的な緊張が引き金となって、脳から「汗を分泌せよ」という指令が出され、これがエクリン汗腺の働きを調節している周囲の神経に伝わり、エクリン汗腺からどっと汗が流れ出てくるのです。
腋窩多汗症でなくても、緊張すれば誰でもわきの下に汗をかきます。

 

しかし通常は、わきの下がじめっと汗ばむ程度で、まもなく汗はひいていくのに対し、腋窩多汗症の方は緊張の度合いが激しいうえ、一度緊張するとなかなかその緊張がとけません。
そのため、脳がいつまでも「汗を分泌せよ」の指令を出しつづけ、結果的に多量の汗が長時間にわたって流れ出ることになるのです。

 

精神的な緊張による発汗は、習慣化しやすいといわれています。緊張をくりかえすことで、エクリン汗腺が鍛えられ、汗がでやすくなる可能性が指摘されているのです。

 

これはエクリン汗腺のみならず、アポクリン汗腺にも当てはまるので、ワキガをともなう腋窩多汗症の方にとってはなおさらやっかいです。

 

「汗をかくとワキガ臭がでる、だから汗をかきたくない」

 

という強い思いが、さらに緊張感を増長し、より汗をかいてしまうという悪循環におちいってしまいます。

病院で行う多汗症の検査はどうやるの?

多汗症の診断で最も大切なのは視診です。
目で見て手が湿っていれば間違いなく多汗症といえるでしょう。

 

ただ汗の出方にも波があり、1日中出ているわけではないので、診察室に入ったときには止まっている場合もあります。
その場合にはこするなどして刺激すると汗が出てきます。

 

視診で汗の量や出る範囲をまずチェックした後、発汗計で発汗波を調べます。

 

どうやって調べるかというと、機械本体とコードでつながったカプセル状のものを患者さんに手で握ってもらいます。
そうして例えば7ケタの数字をってそれを患者さんに逆からけつてもらうというような軽いメンタル・ストレスを与えるのです。
そうするとこれに反応して汗が出始めますので、その手のひらの湿度や波動を測るのです。

 

これらの診断により、グレード(進行度)を判断します。

 

一般にグレードは3段階に分けられます。
グレード1は、汗で手が湿ってはいるが、肉眼で水滴としては見えない状態。
グレード2は、水滴が肉眼で見え、手のひらに水たまりができることがあります。
グレード3は、間断なく、手から汗がしたたり落ちる状態です。

 

このグレードを手術をするかどうかの目安にしています。
グレード2、3の患者さんは日常生活、あるいは仕事をする上でかなり支障が出るので、手術をするメリットは大いにあるでしょう。
しかしグレードーであれば文字を書いて紙が濡れるというほどではなく、職業的に問題はほとんどないと思われます。

 

手術をした後の代償性発汗はほとんど全員にありますから、グレード1の患者さんでは、手術で得られた効果よりも副作用のほうが気になり、結果に満足できないという人もいます。

 

視診、触診のほかに臨床心理士による面談を行い、これまでの経緯、家族歴、日常生活や仕事の上で、多汗症がどれだけ障害になっているのかを患者さんと相談し、手術を行うか否かを決定します。

 

手のひらの汗の場合、ブロック、または切除した交感神経の分布域より上、つまり乳首から上の汗が止まり、そこから下のほう、背中、おなか、胸、太もも、臀部(でんぶ)の汗が増えることになります。

 

足の裏の場合は膝から下の汗が止まり、他の部分、顔、首などの汗が多くなります。

 

汗というのはどんなところからも出ているのですが、露出部分の汗はすぐに蒸発するのであまり気にならないものです。
しかし洋服で覆われていると汗が発散されないのでじっとりとこもり、不快感につながるのです。

 

ですから背中やおなかなど普段洋服で覆われている部分に代償性発汗のある、手のひらの汗の治療のほうが、より不快に感じる人が多いようです。

 

代償性発汗は96%の人に生じますが、病院の調査では約4割の人はそれほど気にならないという結果が出ています。

 

しかし冬場に手術を受けて、しばらくは代償性発汗が気にならなかったのに、夏を迎えてその重大さに改めて気づくという場合もあるので、ある程度様子をみてみなければ判断はできません。

多汗症と紛らわしい病気

さて、先ほどでも少し触れましたが、多汗症と間違えやすい病気にわきが(肢臭症)があります。

 

多汗症の水のような汗は、エクリン腺という体温調節をつかさどる汗腺から発生し、わきがの粘度の強い汗は、アポクリン腺という動物特有の臭い(体臭)を発生させる役割をになう汗腺から出ます。

 

エクリン腺が全身に分布するのに対し、アポクリン腺は肢の下、外耳道、外陰部など体毛のある限られた部分にしか分布しておらず、独特の臭いを伴うのが特徴です。

 

アポクリン腺は性成熟とともに分泌が活発になり、動物の性行動に影響を与える芳香腺の遺残器官と考えられています。アポクリン腺は、エクリン腺よりも深いところにあります。

 

多汗症をわきがと間違えて手術を受ける人がいるようですが、汗腺の位置が違うのですから、わきがの手術をしても手のひらや足の裏の汗は止まりません。

 

もう1つお話しておきましょう。

 

ここで主に述べているのは、特別の理由もなく手のひらや足の裂に大量の汗をかく特発性手掌足蹴多汗症ですが、これとは別になんらかの病気があってそれが原因で起きる「症候性(続発性)多汗症」というものがあります。こちらは全身に汗をかきます。

 

症候性多汗症の原因として最も多いのは、代謝の亢進である甲状腺機能亢進症です。手が震え、脈拍が多くなり目が飛び出し気味になるのが特徴です。

 

内分泌科や甲状腺の専門医のもとで、適切な治療を受けましょう。

 

また更年期障害などの症状の1つで、かっと汗をかいたと思ったらすぐにひく、「ホットフラッシュ」(ホルモンバランスの乱れで起こるのぼせ症状)もこれにあたります。

 

これらは一時的なものの場合が多いのですが、気になる人には婦人科でのホルモン補充療法や、局所麻酔で自律神経のアンバランスを是正する星状神経節ブロックというベインクリニック科での治療、あるいは漢方薬などが効果をあげるケースもあります。